2020年01月18日 10:01
「隠れている同期現象の不思議」
伊東 充隆
同期現象または、同乗作用(Entrainment)は、17世紀のオランダの科学者 クリスチャン・ホイヘンスが有名です。
彼は壁に掛けられている二つの振り子時計を観察して、違うリズムで触れていた二つの振り子が時間経過と共に同期して一緒のリズムで振れ始めることを発見しました。
わかりやすい表現で言うなら、自然界の全ては、最小のエネルギーで最大効率を上げる為に近くにあるものと一緒のリズムを刻んで共に振れようとする働きがあるということです。
気づきやすい同期現象は色々ありますが、私たちの他者とのコミュニケーションに関しての同期現象に気づいている人はほとんどいないと思います。
かつて、ボストン医科大学のウィリアム・S・コンドン博士は、 「言葉と儀礼的なジェスチャーとの関係」の研究の中で、驚くべき発見をしました。
博士は、二人の人間による会話を映像に撮って、そのフィルム(1秒間に48コマ撮影)を時間運動分析することによって研究したのです。
たった4秒半の会話場面を分析するのになんと1年半を費やしたということです。
その結果、話し手の言葉とジェスチャー(動作)は完全に同期していることがわかりました。
これだけならそれほど驚きませんが、同期していたのはそれだけではありませんでした。
なんと聞き手とも完全に同期していたのです。
さらに驚くべきは、映像に映りこんでいた完全な部外者さえも同期性がみられたのです。
よくコミュニケーションはキャッチボールだと言われますが、それは脳の認識レベルの錯覚であり、本質的には一緒のリズムで共にダンスをしているようなものだということです。
時間の中での認識では、刺激が来てそれに反応しているようにしか見えません。しかし、知覚できない背景では、本当は全てが同時に起こっているのです。
思考では、この同時に起こっているという真実は理解できないし、五感では知覚できません。ただ、その不可思議に心を開いてみて下さい。